触れるか触れないかくらいの距離だったけれど、確かに触れていたはず。


唇にやわらかい感触がして、それが人の、黒羽さんの唇であるということをさらに理解するまでに3秒ほど。


「はい、ペナルティ。黒羽さん呼びと敬語の」


「……っ、!」


ペ、ペナルティとかあるの!?


しかもキ、キス、なんて……っ!


キスなんて弘樹くんともしたことなかったのに……!


湯気が出そうな程に顔と体が暑い。


ドッドッとうるさいくらい跳ねる心臓。


追い打ちをかけるように楽しそうな声で黒羽さんが言った。


「こーゆーのも命令に入るからね?」


「っ、え?」


それと同時にパタンと閉じられるドア。