そこには私の元彼で、今の麗華の彼氏である弘樹くんがいたのだ。
名前を呼び止められて、思わず足を止めてしまったけど、元カノに話しかけるわけないし、聞き間違いかなと思って再び歩き出す。
けど、それは私の幻聴なんかじゃなかったらしい。
「無視?ちょっと待てよ」
「……っ、」
がし、と手首を強く掴まれた。
男子の力のかなりの痛さに顔を歪める。
どうして。
私を捨てたのはあなたの方なのに、話しかけてくるの。
「……、なに」
「は、やっとこっち見た」
なぜか嬉しそうに笑う弘樹くん。私の手を掴んでまで自分を見させようとしてきたことに鳥肌がたつ。
「ねえ、っ、離してよ」
「なあ、黒羽朝光と付き合ってんの?」
は?と声が出そうになった。
なんで、そんなことを弘樹くんに聞かれなくちゃいけないのか。