ぴし、と音を立ててうちのクラスが凍った。
廊下からにこやかにこっちを見ているのは、
「凪、くん」
凪くんだった。
目を三日月形に細めて、唇の端を上げて。
笑っている''形''を作っていた凪くん。
凪くんも朝光くんに負けず劣らずのイケメンだから、いつもは女子が騒ぐはずなのに、今日は違かった。
いや、女子が違うんじゃない。
凪くんの雰囲気がいつもと全く違うんだ。
「ね、俺聞いてんだけど。君は''何''を見たの?」
凪くんの瞳の奥が、暗く暗く染まる。
笑っている、のにこの場にいる誰よりもすごい威圧感。
「あ、えっと……、その、」
さっきまで泣いていたはずの麗華の涙はとっくに消えていて、今は''恐怖''しか浮かんでいないみたい。
嘘をついても見透かされる、そんなことは当たり前のように分かって、誰も口を発することができなかった。