御影さんに恥をかかせないため?

ううん、それもあるけど違う。

わたしが御影さんにちょっとでも好きなってほしいって思ってるからかもしれない。



「言い残すことはそれだけ?」


「え?」


「お前の金持ち人生も今日で終了だ」



背筋がぞくり、とするほど酷く冷たい声で吐き捨てた。


これがみんなが知っている御影さんの姿。


彼がみんなから恐れられる意味がよくわかった気がする。

何の躊躇もなく、顔色一つも変えずに人の人生を左右する決断を下せるからだ。



「ちょっと待ってください、御影様……!それだけはどうかお許しを……!」


「お前がどうなろうが俺の知ったことじゃない」



掴んだ腕を振り払われたクラスメイトはその場にヘナヘナと力なく座り込んだ。

この世の終わり。
まさにそんな顔をしている。

御影さんは一体、何人の人生を変えてきたのだろう。
でも、それもきっと上に立つ人間の役目なんだろうな。


御影さんはわたしのほうを向いて一部分がオレンジに染ったドレスをジッと見つめると、いきなりわたしの手を掴んで歩き出した。