「あっ、ごめーん。手が滑っちゃったぁ。せっかくのお洋服が……まあ、でもどうせ高いものじゃないんだからいいよね」


わたしのことをバカにしているその瞳に映る自分がどうしようもなく惨めで、そっと視線を下に落とした。


この汚れ落ちるかな……?


せっかく御影さんが一生懸命選んでくれた可愛くて綺麗なドレスだったのに。

大切にしようって、またいつか御影さんに相応しい女性になれた時に着ようって決めていたのに。

こんなんじゃ……着れないじゃん。


ぎゅっ、と握った拳に力が入る。

涙で視界が歪み、どんどん世界が滲んでいく。


会場からはわたしを蔑む笑い声が響き、逃げ出したい衝動に駆られて、ああ、もうダメだ……と思ったその瞬間、わたしの前に大きな背中が見えた。


……誰?


その人がわたしの前に立っただけで嘘みたいに会場から笑い声が消え、空気が変わり、一瞬にして凍り付いた。