「え?」


「はやく掴んで。こっちだって恥ずいから」



そう言うと、ぷいっとそっぽを向いてしまった。

かわいいなあ、と心の中で思いながらお言葉に甘えて彼の手を取った。

まさか、エスコートしてくれるなんて思ってもなかったんだもん。



「さっさと歩かないと置いていくぞ」


「ま、待ってください!」



前言撤回。

全然エスコートなんてしてくれてない。
歩くスピードすごい早いし。

ただでさえ、歩き慣れていないヒールなのに。

まあ、御影さんらしいからいいんだけどね。


パーティー会場はすでにたくさんの招待客で賑わっており、御影さんが扉を開けると、会場にいる人すべての視線が一斉にこちらに向いた。


うぅ……人から注目されることなんて慣れてないから緊張してしちゃう。


わたしの姿を見ながら隣の人と耳元でヒソヒソと話している人やクスクスとバカにしたような目で笑っている人。

色々な視線がグサグサと容赦なく突き刺さる。