さっきまで無表情だったくせに今はどこか楽しそうに返事を急かしてくる彼はわたしの目には悪魔のようにしか見えない。


このまま、借金を背負ったまま人生を終えるのは嫌だ。


この人と結婚しなかったとしてもどうせこの先、借金を返すためには身体を売らないと間に合わないだろうし……それだったら借金を肩代わりしてもらって酷いことされるほうがまだマシかもしれない。



「不束者ですが、どうぞよろしくお願いいたします」



覚悟を決めたわたしは御影様に深々と頭を下げた。



「決まりね。じゃあ、さっそく明日から家に住んでもらうから荷物まとめといて。明日の16時に迎えに行くから」



それだけ言うと、御影様は手をひらひらとさせながら少し先で待たせていた高級そうな車の方へ歩いて行った。


あれ……迎えに来るって言ってたけどわたしの家知ってるのかな。


でも、まあいっか。

これが嘘だとしてもどうせ何も変わらない。

わたしはこのまま誰かを愛すことも愛されることもなく、一生働いて生きていかなきゃいけないのだから。


だけどね、叶うことなら一度でいいから誰かを愛して、誰かに愛されたかったなあ。


お父さん、お母さん、お兄ちゃん、ごめんね。
わたし、好きじゃない人と結婚します。