そんな家庭を俺は何回も見てきたし、見捨ててきたはず。
それがこの世界で生きてくことでの当たり前だと思っていたから。
『琉世も知ってるだろ?借金苦に陥った家族の行く末を。だけど、優生だけは巻き込みたくない。ちゃんと幸せに生きてほしいんだ』
妹の顔を思い浮かべているのか、優しく目を細めて笑った姿に俺の胸がぎゅうっと苦しいくらい締め付けられた。
きっと、コイツの中ではもう覚悟は決まっているんだ。
俺が何を言っても聞く耳を持たない。
俺は、コイツを救えない。
その時、自分がとてつもなく弱く、無力な男に思えた。
『でも、どうして俺なんだよ。俺は……』
『琉世は俺が出会った中でも一番正直で優しい男だってわかってるから。お前なら安心して優生を任せられる』
そう言って、あたたかい春風のようにふわりと優しく微笑んだ。
だから、
『……わかったよ』
そう答えるしがなかった。
本当はわかったなんて言いたくなかった。