「わたし……っ、何も言えなかった……。全部伊勢谷さんの言う通りだったから……っ。指輪も、失くしちゃった……っ」



ただ泣くことしかできないわたしをつぼみちゃんが何も言わずにぎゅっと抱きしめてくれた。


その温かさに堰を切ったかのように涙が溢れ出てきた。


おかしいと思っていた。

急に現れた御影さんが見ず知らずのわたしのために結婚を条件に借金を返済してくれて、今でも大切にしてくれているなんて。


あまりにも出来すぎた話だったんだよ。

お兄ちゃんと琉世さんが親友だったのなら、琉世さんは優しいからわたしのことを助けてくれてもおかしくない。


それなのにわたしは何も知らないで彼の愛情や言葉を本物だと勘違いして生きてたんだ。



これからどうやって生きていけばいいんだろう。

琉世さんには幸せになってほしい。

ちゃんと好きになった人と。



同情なんかじゃなく、心の底から大切にしたいと思う人と。