「でも、今は家に帰ったらお前がいて……初めて家族っていいなって思った」
琉世さんはこの一ヶ月、そんなふうに思って過ごしていたんだ。
思わず、わたしは彼の背中に手を回し、ぎゅっと力の限り強く抱き締めた。
「生まれてきたことにはみんな平等に意味があるんだよ。わたしたち人間は誰かと誰かが愛し合ってできた愛の結晶なんだから」
「っ……!」
そんなことないって言われるかもしれない。
でも、琉世さんは愛されてるよ。
「琉世さんは一人じゃないよ」
琉世さんは何も言わずにただ黙ってわたしを強く抱きしめていた。
名家に生まれた宿命からは逃れられなかったんだろう。
幼い頃から大人の世界に揉まれて、周りよりも先に大人にならなきゃいけなかったんだと思う。
“御影家”という大きすぎるものを背負った世界で生きていくには感情を殺して生きていくしか道がなかったのかもしれない。
この世に生まれてこなくていい人なんていない。
誰にだって愛される権利はある。
それをどうか拒んだり、ないものだと思わないで。