「今度はなん……だ、よ」



驚く琉世さんの声が聞こえてきたと思ったら、琉世さんはケーキを持っているわたしをみて言葉を詰まらせた。



「ハッピーバースデートゥーユー、ハッピーバースデートゥーユー。ハッピーバースデイ ディア 琉世さん!ハッピーバースデートゥーユー!」



歌いながら、琉世さんの前にケーキを置いた。



「……」


「本当におめでとう。琉世さん」



その瞬間、琉世さんの瞳から一粒の透明な雫がこぼれ落ち、頬を伝った。



「り、琉世さん!?」


「お前のせいだ……」



その言葉が聞こえてきたと思ったら、身体があたたかい体温に包まれた。


え……?

抱きしめられているということを理解するのに少し時間がかかった。



「……琉世さん?」


「一年で一番嫌いな日だった」



耳に届いたその声はとても彼のものとは思えないほど弱々しいものだった。



「……」


「いつも一人で誰も帰ってこない。俺が生まれたことに意味なんてないって思ってた」