「生まれてきてよかったって思ってほしいんです。だって、わたしは琉世さんに救われたから。あんなに死にたいって思ってたのに今は生きてて楽しいんです。それも全部琉世さんのおかげです」
家族を失くして、借金を背負って、毎日必死に働いて、未来なんて見えない地獄みたいな日々を過ごしていた。
そこから抜け出させてくれたのは琉世さんだ。
たとえ、愛のない結婚でも、妹みたいな存在でも、わたしを大切にしてくれているのは伝わってくるから心が温かくなるんだ。
よし、今日は琉世さんのために頑張ろう!
そう決めたからには行動しないと!
「わたし、出かけてきます!」
いつか、琉世さんと出かけたときに彼は楽しそうに手を繋いで歩く家族連れを車から悲しげに見つめていたことをふと思い出した。
きっと、彼にはそんな思い出なんてないんだろうな。
誕生日にいい思い出がないなんて悲しすぎるよ。