わたしは家族が生きていた頃はそんなこと経験したことがなかったから。

誕生日の日は家族みんなが優しい笑顔でお祝いしてくれて、欲しいプレゼントを買ってくれて、

夜はわたしの大好きなお母さんの料理で、願い事をしながらロウソクを消して、みんなで仲良くケーキを食べて……そんな幸せしか味わったことがない。


でも……琉世さんはそんな幸せを知らない。


今、なんとなく少し分かった気がするよ。

琉世さんがなぜあんな氷のように冷たい瞳で人のことを見ているのか。


あの人は人の温もりを全然知らない。


楽しいことも、嬉しいことも。

悲しみと孤独で心が埋められているからなんだ。



「わたし……もっと琉世さんに知ってほしい。誕生日って寂しいだけじゃなくてこんなに幸せな日なんだよって。琉世さんは一人じゃないよって」


「……優生ちゃん」