「… さく、本当に一緒に行かないの?」



咲夜の右足の手当てをした後、2人は京へ向かう鉄道のホームにいた。



雪美は陸に性的暴行された挙句、鈴香のように監禁されかけ、咲夜は咲夜で突然、無実の罪を着せられ理不尽にもお尋ね者状態。



このまま長崎に滞在ことは危険だと判断した咲夜は蓮稀と同じ決断を… 雪美を京に避難させようとしていた。



「俺はまだ行けない、残った蓮稀が心配だから。先に行って京で待っててくれ」



「さく… 」



「大丈夫だ。絶対ゆきのこと追いかけるから、昔旅したあの桜の木の場所で会おう… 約束する」



「… 約束だからね!?」



涙を浮かべる雪美を宥めながら優しく頭を撫でた咲夜は " 待っててくれ " と伝え、雪美を列車に乗せる。



「蓮稀を助けて必ず追いかけるから」



「 …さく、待ってるから」



本心を言えばゆきと離れたくはない。このまま2人で一緒に逃げて、ゆきと幸せに、穏やかに過ごせたら… そんな事を考えそうになる自分もいる。



自分の命が危うくなる状況でゆきを助けてくれた。



ゆきを逃したと、今蓮稀はどんな罰を受けさせられているのか… 蓮稀は大切な家族であり、俺のたった一人の兄。ほっておくなど出来る訳がない。



「… 蓮稀、頼むから無事でいてくれ」



雪美の乗った列車を見送った咲夜は、右足の激痛と戦い、足を庇いながら、牢屋敷へと急いだ。