蓮稀と話してからどれくらいの時間が経っただろう。蓮稀の香りと温かい温もりにドキドキしながらも、振られた事実は変わらない…



蓮稀が立ち去った後も私はその場に腰を下ろして、ただただ暫くの間、蓮の花を眺めていた。



「ゆき…」



蓮の花を眺める雪美の名前を呼んだのは咲夜。



「さく?」



「蓮稀に雪美が呼んでるって言われて…」



「……。」



「ゆき、目が赤い…」



「そ、そんなことないよ!!」



" 泣いちゃったからだ "



咲夜に心配かけたく無いと、目の前で欠伸をしてみせたり必死で目の赤さを誤魔化そうとする雪美。



雪美の反応見て咲夜は色々悟ったのか、深く追求はせず " じゃーん!" と言いながら、自分の懐から雪美の好きな団子を出す。



「今日は三色団子だぞー」



雪美は団子を受け取り、その場でもぐもぐ…



「美味いか?」



" 美味しい… " と言いながら雪美は咲夜の優しさを受け、糸が切れたかの様に "うわーん " と泣き始めた。



「…うわあああああーん」



咲夜は、食べながら泣いている雪美に対して何も聞かず、何も言わず、ただただ頭を撫でながら一緒に団子を食べる。



泣きながらも雪美は団子をしっかりと完食、それだけじゃ足りず咲夜の食べかけの団子をじっと見る…



可愛いなあ… そんな雪美の視線に気付いた咲夜は思わず吹き出し愛おしそうに微笑む。



「… 食うか?」



食べかけの団子を手渡す咲夜。



雪美は " ありがとう " と、嬉しそうにお礼を言い、咲夜から貰った団子を幸せそうに食べる。



「本当、色気ねえよな…」



咲夜の言葉に少しムスッとしながらも、雪美はなんだか救われた気持ちになり思わず笑ってしまった。



「…やっと笑った。俺はゆきの笑った顔が好きだ」



ゆき、今のゆきの心を癒すにはこれくらいの事しかしてやれないけど… それでも俺は、どんな時でもゆきの味方だし、誰よりもお前のことを想ってるからな。



… 俺の気持ち、いつかゆきに届きますように。