「どうしたの、蓮稀?」



蓮稀が私の屋敷に来るなんて一体どうしたんだろう?もしかして私になにか用事?



「少し散歩をしないか?」



え、夢みたい…



蓮稀から散歩に誘ってくれるなんて… テンションの上がる雪美は、嬉しそうに蓮稀の少し後ろを歩きながら着いて行く。



暫く歩いて着いたのは蓮の花が沢山咲く、蓮稀と初めて会った日も来た場所だった。



「蓮稀見て!ここは今日もすごく綺麗 … あ、鯉もいるよ!」



「……。」



「…蓮稀?」



反応のない蓮稀に違和感を感じた雪美は、鯉を見るのを辞めて蓮稀の居る方を振り返り首を傾げる。



「…お前が俺を慕っているのは気付いている。でもそれには答えられない」



え、私の気持ちバレてた!?


突然話し始めた蓮稀の会話の内容に焦りながらも、思考回路を働かせている自分も居て… " 今、私は振られたんだ " と、子供ながらに理解する。



「え… わ、分かってるよ?それに私、蓮稀はお兄ちゃんって… ちゃんと… 思って… 」



蓮稀、私から目を逸らさず
真剣に向き合おうとしてる。



薄々気付いてた " 妹みたい " って言われたあの日から… けど、気付かないフリをしていた。



だって、そこに向き合えば私の初めての初恋は本当にそこで終わってしまう。



「そんな顔をさせるつもりでも泣かせたい訳でもない… 俺は咲夜と雪美の幸せを心から願っている」



やだ、何も言わないで、考えたくない。



頭がボーッとする中
背中に感じる温かい感触にハッとする。



これが最初で最後の初恋…



私はいつの間にか蓮稀に抱きしめられていた。