篠井くん越しの空も、春から夏に変わろうとする風も、眉間の皺がなくならない篠井くんも

「っ……」

 キラキラ、輝いて見えた。

 それが綺麗すぎて、自分まで綺麗になった気がしてなんだか泣きそうになった。
 それは昨日篠井くんの曲を聞いた時の感じととても似ていた。

「篠井、くん」

「あ?」

 歩きだそうとしていた篠井くんが立ち止まって振り返ってくれる。

「昨日歌ってくれた曲……また、聞きたい……っ」

 篠井くんは一瞬目を大きくしたかと思えば、パッと私から目を逸らして前を向いた。

「……あれ未発表曲だから高くつくけど」

「えっ」

 高くつくって……お金かかるってこと?

「そっか……」

 篠井くんはもう収入を貰って曲を作るようなプロなんだ。
 私のお小遣いじゃきっと足りない金額だよね。
 もしかして昨日弾いてくれたのも、本当はお金かかる……?