「っ、……ララ~……ん゛んっ……ラァー……っ」

 案の定、緊張で縮こまった私の歌は、声にもならない。

「……、っ」

 そのまま喉につっかえて、消えてしまった。
 ヘッドフォンの彼はあからさまにさめた目で私を見て、手を止める。

「……ふざけてんの?」

 その声音の強さに心臓が凍って、私は涙目で顔を横に振る。

「じゃあなんでさっきみたいに歌わねーんだよ」

「き、緊張、しちゃって……」

「あ゛?」

「ギ、ギターがないと、ダメ、で……歌えない……っ」

 私が勇気を振り絞って言うと、ヘッドフォンの彼は目を丸くした。

「はー……そういう感じ」

 なぜか感心したように言ったヘッドフォンの彼から、ギターを奪い返して抱きしめる。
 そんな私を、彼はまたじっと見てくる。