……え?

「貸して」

 そう言ってヘッドフォンの彼は私のギターを指さした。

「へ」

「このギター貸して」

 無表情の彼は、私からギターを取り上げた。

「え!?」

「俺弾くから歌って」

 ヘッドフォンの彼は私の隣に座って、慣れた手つきで組んだ足にギターを置き、ジャーンとワンストロークした。 
 
「……!」

 その音色だけで、上手な人だってわかった。
 中学生でここまで弾ける人はなかなか見ないから、その音を鳴らす彼の手に釘付けになる。
 彼は力強い音を鳴らしながら、鼻歌でメロを軽く歌い始める。 

「♪~……」

 ……あ。これ、幼稚園の友達とよく歌ってた曲だ。
 
「これ知ってんだろ。ラララーでいいから歌って」

「え」

「さんはい」

 言われるがまま私は咄嗟に息を吸った。