「おい」

 力が入らなくなってしまった私に彼は長い足を折ってしゃがみ、顔を覗き込ませてくる。

「ひっ、す、すみませ……っ」

 これ以上どうしようもなくて、苦肉の策で顔を俯かせる。

「なんで謝んだよ」

「すみま、せん……っ」

 ヘッドフォンの彼のため息が聞こえた。

 お願いです、私はきっとあなたを楽しませてあげられません。
 どうか、どうか今日のところは見逃してください……!

 そこでまた舌打ちが聞こえたと思ったら、顔を両側から持たれてグイッと無理やりあげられた。

「!?」
 
「っ、お前の歌!」

 そこにあった男の子の瞳に、ちょうど灯った街灯の光がうつりこんでいた。

「エモくてすげぇかっこいいっつってんの!」