「きったねー声」


 背後から男の子の声がして、全身に鳥肌が立ちあがった。

 勢いよく振り返るとそこには、首にヘッドフォンをかける男の子がいた。

 制服からして同じ中学らしい男の子は、土手の一番高いところにだらしなく座って無表情で私を見下ろしている。
 恐怖でヒュッと喉が鳴った。
 そのヘッドフォンの彼の澄んだ目は内から溢れる自信に満ち満ちていて、ちょっとやそっとのことには動じない力強さを感じた。
 小学校のときそういう目をした男の子にされた嫌がらせの数々を思い出して、本能が〝逃げろ〟と警鐘を鳴らす。


「でもエモい」


 逃げようと動かした足を、止めた。
 

「え……?」