カレンダーは、既に碧の誕生月に変わってしまっていた。

もう、婚約指輪はオーダーしてしまった。

今更、プロポーズを無しにする、という選択肢は無論、ない。

何とかして、今のこの状態を打破しなければ。

プロポーズの日まで、もう5日しかない。

それでも、時間は待ってくれない。

今日も格好のネタとばかりに、深月ちゃんや理名ちゃんにやいやい言われそうだ。

それでも、社会人たるもの、仕事はしなくてはならない。

病院に入ると、血液内科医の拓実くんに挨拶された。

「おはようございます」

「お、おはよう。
朝から顔が暗いぞー。

まだ喧嘩継続中なの?

長いねぇ。

まぁ、お前と碧ちゃんなら大丈夫。

少なくとも、俺と理名みたいにはならないって」

拓実は、彼女である理名ちゃんと同棲を始めたばかりの頃、家を空けてばかりで理名ちゃんのことを顧みなかった。

その結果、彼女から不妊症なのだと言い出せず、彼女自らが服薬自殺未遂をはかる要因を作った。


時が経った今でも、拓実は当時のことを後悔しているようだ。

俺と理名みたいになるなよ、と言って軽く俺の肩を叩いて、俺の横を通り過ぎていく。