――違う、分からなくなるとかそういうことではないの。
そう言おうとしても、舞子は言葉が出なかった。
なんというか、町が違うのだ。
電線が張り巡らされているし、自動車だって、一軒一軒にある。
ちらほら、見える浴衣姿の女性は桃色や白といったふわふわした色の浴衣を着ている。
しかし……。
少し前には上機嫌な背中があって、今日を楽しみにしてくれたことが伝わる。
水は差したくない。
「舞子さん、顔色悪いですよ。休憩しますか」
優しく気遣ってくれる彼に何でもない、大丈夫よと、作り笑顔で何度も誤魔化した。
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