舞子さんは迷ったように黙った。そこへもう一押しする。
「夏のロマンス始まるかもしれませんよ」
舞子さんはロマンスに浮かれているから、それを蜜に誘惑する。
ずるい手だと思いながらも、こっちだって振り向いてほしいんだよ。
「俺と行きましょう。ね、舞子さん」
誰かと約束しているかもしれないとか、
心に決めた人がいるとか、
そんなのはどうでもよかった。
舞子さんは目を見開いた後、
「楽しそうね」と大人っぽい顔で微笑んだ。
彼女の余裕は断ち切れなくて、
ちょっと悔しかった。
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