「続きは…?」
先輩の濡れた髪からぽたりと一滴。
それが泣いているように見えて、先輩の頬に手を当てた。
「先輩が、好きです…。あの初めて会った雪の日からずっと…」
泣いているように見えたんじゃなくて、先輩は本当に泣いていたんだ。
「…うん。俺も、あの日からずっと好きだった」
その言葉は聞き間違いじゃないかと思うくらいに嬉しくて、気がついたら先輩の腕の中で私も泣いていた。
抱きしめてくれる先輩の体温が心地いい。
「先輩は忘れてると思ってました…あの日のことなんて。だから“初めまして”って言われたとき、すっごく悲しかった…」
「…ごめん。俺も結子は覚えてないと思ったんだ。だから…悲しませてごめんな」
いつの間にか呼び捨てになった名前。
繋いだ手。
“好き”の言葉。
全部が嬉しくて、最低だと思った誕生日が最高に変わった。
ねぇ、先輩。
先輩が好きです。
大好きです。
「さっき郁奈ちゃんに聞いたんだけど、結子、今日誕生日なんだってな。何か欲しいものある?」
「もう貰いました!」
不思議そうな顔をしていた先輩は言葉の意味を理解したのか、クスクスと笑い始めた。