玄関を出て鍵を閉める。
先輩に手を振って、うっすらと残るふたつの足跡を追いかけた。
追いつけるかなんてわからない。
でも追いつかなきゃいけないんだ。
コートも羽織らず、雪の降る中何度も転びそうになりながら走った。
足跡を追いかけて、追いかけて、角を曲がってやっと見えた2人の姿。
「先輩…」
私の声は白くなった息と一緒に静かに消える。
先輩に届くように、もっと大きく。
“待って”って心は叫んでる。
ねえ、待って先輩…。
離れて行かないで…。
「先輩!!」
叫び声にも似た私の声に、2人は振り返る。
止まない雪。
濡れた髪。
震える身体。
それでも先輩に近づきたくて、一歩一歩確かめるように歩く。
なのに私が先輩のところに行くよりも早く、先輩は私のところまで来てくれた。
「なんでそんな格好で来るんだよ!」
先輩の白くなった息がかかる。
先輩だ…。
目の前に、ちゃんと先輩がいる…。
「先輩、私…」
泣きそうになりながら、ゆっくりと話す。
そんな私に先輩は自分のしていたマフラーをふわりと巻いてくれた。