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決定的なことが起こったのはその翌日のことだった。
その日も花子は絵美の部屋にやってきた。

「ねぇ、これちょうだい!」
ベッドに寝転がって漫画を読んでいた絵美はまたかと思って顔を向ける。

今度はなんだろうと思ったが、花子が手にしている万年筆の入った箱を見て慌てて飛び起きた。
「それはダメ!」

すぐに駆け寄って花子の手から万年筆を奪い取る。
机の引き出しに入れていたはずなのに、勝手に取り出したんだろう。

触ってもいいなんて、言ってないのに。

「でもそれ箱に入ったままで使ってないよね?」
「これは大切なものだから置いてあるの。死んだお父さんがくれた最後の誕生日プレゼントなんだから」

絵美は両手で万年筆をギュッと抱きしめるようにして花子から遠ざけた。