12月24日。

 冬はどんどん深まって行って、クリスマス当日は、今にも雪が降り出しそうな分厚い真っ黒な雲が空を覆っていた。

 待ち合わせにはやっぱり早く着いてしまって、私はカフェでコーヒーをいただきながら、冬月くんを待っていた。

 もしかしたら今日、彼は来ないかもしれないな、なんてことを少し思っていた。

 例の彼女と、クリスマスを過ごすことになったかもしれないし…。

 しかしそんな私の見解とは裏腹に待ち合わせの二十分前、彼が改札から出てくるのが見えて、私は慌てて待ち合わせ場所に戻った。


「冬月くん!」

「白雪さん、ちゃんと暖かいところで待ってた?」

「はい…」


 素敵に微笑んだ冬月くんは、今日も眩しかった。


「白雪さん、今日の格好、…可愛いね」

「ありがとうございます…」


 私が無理なおしゃれをして着飾ってきたことも、すぐに気が付いて褒めてくれる。こんな人がモテないわけがないのだ。それとも言いなれているのだろうか。

 嫌な考え方ばかりしている自分に嫌気がさす。なんて失礼なんだ。


「白雪さん?」


 私の顔を覗き込むように聞いてくる冬月くんに、私はやっぱりドキドキしてしまう。


「なんともないです!行きましょう」


 まずはお昼ご飯のため、少しおしゃれなカフェでランチを食べる。

 お店を選んでくれたのは冬月くんだった。女の子と来たことがあるのかな、なんて思ってしまって、味はよく分からなかった。

 それからウィンドウショッピングをして、広場のクリスマスマーケットに行った。

 まさに夢に描いていたようなクリスマスデートだった。

 そんなせっかく楽しい一日を、私はどうしてこうも楽しめていないのだろうか。


「少し疲れちゃった?あそこ座ろうか」


 広場のベンチに二人並んで腰を下ろす。

 ちょっと前の私なら、冬月くんとこうやって二人で過ごしているだけで、最高に幸せで、これ以上望むことなんてなかったのに。

 ああ嫌だな、と思った。

 恋する気持ちはきらきらなんかじゃない。もやもやくろくろどんよりだ。

 私、冬月くんのこと、相当好きなんだなぁ。そう思わざるを得なかった。

 一緒にいるだけじゃ満足できなくて、少し話せただけで嬉しかったはずなのに、もっと話したいって思っちゃう。まだまだずっと一緒にいたいし、欲を言えば。

 ああそうなのだ。私は、冬月くんに、私だけを見てほしくなってしまったのだ。

 一週間に一回の図書当番が嬉しかった。一緒に帰れるのが夢みたいだった。ファミレスでお喋りできるなんて、天国だと思った。今日は?せっかくのクリスマスデートなのに…。

 このまま冬月くんの時間を無駄にさせるわけにはいかないとも思った。