週末、私はショッピングモールに出掛けた。冬月くんとのクリスマスデートに着ていく服が、なかったからである。
これまでしたことのない男の子とのデートに何を着て行っていいのか、全く分からなかった私は、アパレルショップのおしゃれな店員さんの力を借りながら、私でもそれなりに可愛く見えるかな?という服を見繕ってもらった。
ひとまずこれで一安心だ。
るんるん気分で帰ろうとした時、とある一人の男性が目についた。
見間違えるはずなどない、冬月くんだ。制服を着ていなくてもすぐに分かる。この私の冬月くんレーダーが反応しているのだから。
お休みの日に冬月くんを見られるなんてラッキーだ。
私は、雑貨屋さんの前で商品を見ている冬月くんを、少し拝んでから帰ろうと思い、ちょっとの間だけこっそりと彼を見ていた。
すると、可愛らしい小柄な女の子がやってきて、かと思うと、冬月くんの腕に飛びついた。
「え…?」
その女の子は冬月くんの手を握ると、彼を引っ張ってアパレルショップの並ぶお店の方へと消えてしまった。
これは、噂の冬月くんの彼女では…?
ショッピングモールでの目撃の噂は本当だったのだ。
でも、彼女いないって。冬月くんはそう言っていたはず。じゃあ今の子はどなたでしょうか…?
急に胃の辺りがもやもやして、なんだか息苦しくなった。
私は慌てて家へと帰ると、ベッドに突っ伏した。
スマホのメッセージアプリを開き、この前の冬月くんとのやり取りを見返す。
本人に聞いてみようか?さっき一緒にいた女の子はどなたでしょうか?
そんなの聞けるわけがない。私はそもそも彼女ですらないのだ。
たまたま冬月くんのクリスマスが空いていて、たまたまコンビニで会った私に声を掛けてくれて、たまたま遊ぶ約束をしただけに過ぎない。
図書当番が一緒なだけの、友人とも呼べるか分からない関係の私に、聞く権利などあるのだろうか。
デートだと言ってくれたのは、私を喜ばせるためだったのかな。
彼が色んな女の子と遊ぶような、軽薄な方だとは思いたくないけれど、私は冬月くんのことを全然知らないのかもしれない。