晩御飯には少し早い夕方のファミレスは、ところどころ席が埋まってはいるものの、全く込み合ってはいなかった。私達と同じように学生が少しいるくらいだ。
二人ではあるけれど、窓際の四人席に案内され、私達は向かい合って腰を下ろす。
メニュー表を広げ、季節のおすすめをチェックしつつ、デザートページへ向かう。
家で母が晩御飯を準備してくれているはずなので、軽いスイーツと、ドリンクバーをいただくことにする。
同じようにメニュー表と睨めっこしていた冬月くんが顔を上げる。
「決まった?」
「はい」
ピンポーンっと軽快な音がして、店員さんが注文を取りに来た。
私はドリンクバーと白玉ぜんざい、冬月くんはがっつりからあげ定食を頼んでいた。
こそばゆく思いながらも、二人でドリンクバーを取りに行く。
放課後デート中の彼氏彼女みたいでは!?と、一人心の中で小躍りした。
あっという間に食べ終わって、熱々の煎茶を飲んでいると、冬月くんが「そうだ」と言って、鞄から一冊の雑誌を取り出した。
それはこの前コンビニで私が手にしていた、『クリスマスイルミネーション特集!』と大きく書かれた雑誌だった。『今年のデートはここで決まり!』とも書いてあり、でででデート!?とその文字に釘付けになってしまう。
「白雪さんはさ、どうして俺の誘いにのってくれたの?」
不意に問いかけられた質問に、私は言葉に詰まる。
どう答えたらいいでしょうか…。私は冬月くんが好きで、少しでも一緒にいられたら嬉しいし、あわよくば仲良くなりたいとも思っている。しかしそんな下心丸出しの返答をするには、まだまだ私の勇気は足りない。彼女はいないと言っていたけれど、私なんかがぐいぐい行ってもいいものでしょうか。
冬月くんを不快にせず、かと言って嘘のない、私の気持ち…なんと伝えたら。
私がうーん、と唸っていると、冬月くんは私の目をじっと見つめて、こう言った。
「白雪さんと、クリスマスにデートできる、って思ってもいいの?」
「で!?」
またしてもやって来たデートと言う単語。冬月くんは、どういう意味で今の言葉を口にしたのだろうか。
頬が急に熱くなって、何も考えられなくなった私は、ただただこくこくと頷き続けた。
冬月くんは嬉しそうに口元を綻ばせた。そんな素敵な顔を見たら、ドキドキが止まらなくなってしまう。
「雑誌見ながら、当日なにするか考えようか」
「は、はい」
向かいに座っていた冬月くんは、「ちょっと詰めて」と言うと、私の隣に移動した。
「こっちの方がお互い見やすいでしょ?」と言って、私の真横に座る。肩がぶつかりそうな近さに冬月くんがいて、緊張で雑誌を見るどころではなかった。
ああもうこの時間だけで幸せです神様。クリスマスもものすごく楽しみですが、この時間も一生続いてほしい。
冬月くんがあそこはどうだとか、ここはどうだとか、色々説明してくれて、プランを提案してくれていたけれど、どれもいいプランだし、何より冬月くんが提案してくれたと言うのが嬉しすぎて、どれも採用したかったのだけれど、最終的に一つのプランに決まった。決めるしかなかった…。