俺が歩きはじめると半歩下がってついてくる。

10歩も歩かないうちにふいに俺の右手を華恋の左手がそっと軽く握った。
俺が振り向くと、上目使いでどこか不安そうな表情を浮かべていた。

繋がれた手に視線を向け、華恋に応えるようにギュッと握り、軽く笑って見せると頬を染めてやわらかい笑顔が返ってきた。



こんなに可愛い華恋を目の前にしても俺の心は何も感じない。
そして思い知らされる。
……奈々じゃないとダメなんだと。



「どこ行こうか?」


2人で、散歩のように街を歩き、適当に店に入り、笑って過ごす。
その間、俺たちの手が放れる事は1度もなかった。