「レイくん……実は、頼みがあるんだ」

「そんな必死の形相してたらわかる、数学教えてとかだろ」

「その通り!さっすがレイくん!!」


キラキラと目を輝かせる。

今日実感したんだ、私は。

レイくんは、頭がすごくいい。とってもいい。


「お願い、このままだと次のテスト赤点なんだよ...!」


必死の形相?そりゃそうだよ。

1年から2年に上がるときも、私は留年ギリギリだったもん。

このままじゃ2年生は留年しちゃう...それだけは嫌だ!


「はあ…………」


レイくんは、深ーいため息をついてから、私を呆れたような無感情な目で見やる。


「適当なカフェでいい?」

「誠にありがとうございます!!」


私は神を拝む気持ちで手をすり合わせ、無事にレイくんからなんだこいつという視線をいただいたのである。






「へー、じゃあレイくんの家、私の近くなんだね!」

「まあ、そう。」


道中にて、私はレイくんの家を聞き出すことに成功した。

といってもどのあたりかだけだが、教えてくれたってことはもう友達認識でいいだろうか。

いや、勉強教えてくれる時点で友達だと思うけど。

でも、認めてくれたようでとても嬉しい。

嬉しくて鼻歌を歌おうかなと思った、そのとき。


「―――見つけた」

「っ!?」


感情の読めない声が、私の耳に入ってきた。

びくっと大袈裟に体を震わせて、私は固まる。

この、声は……っ!


「どこに行ったかと思ったら...こんなところで他の男に現を抜かしていたなんてな」


レイくんと、ゆっくり振り返る。

背後にいたのは茶髪の男。レイくんくらい背が高くて、数年前は仲がよくて。

そんな彼は。


「……貴也くん」

「結野、あいつ誰?」

「俺は高森(たかもり) 貴也(たかや)。そこのかわいい果音の...」


彼は、彼は。


「果音の、元カレだよ」


私がずっと逃げている、元カレだ。