「…あの男は結局、使い物にならなかったみたいね」

「それはそうだよ。他人の恋慕を利用するなんて上手くいくはずないもんね。むしろ、父と妹を殺せただけ嬉しい誤算かなー」


それは、久雪街のとある場所。

オレは、目の前で仲睦まじい様子で偉そうに座る2人と話していた。


「次は学園で仕掛けるんだろ?彼女が18歳になれば、あいつと結婚してしまうかもしれない。動きを悟られる前に達成しなさい」


動きなんて、もう悟られてると思うけど、と。

そんな呟きを押し殺すように微笑む。


「わかった。既に学園に圧力をかけたから、じきに始まると思うよー」


こいつらは本当に馬鹿だ。

自分たち以外を人とも思っていないから、どうせあいつの実力も見抜けていないんだろうし。

でも、オレは従っていなくちゃいけない。

――まだ、そのときじゃない。


「学園交流。そこで彼女たちに仕掛けるよ。オレ直々にねー」


オレの貼り付けた笑みを見抜けもできずに、2人は満足そうに微笑んだ。


…さて、じゃあ、彼女たちの頑張りに期待するとしよう。

ねえ、澪。

すぐにやられてくれるなよ。


「絶対に成功させるの。私たち、神崎一族の悲願のために―――……」


そんな言葉を背に、部屋を出る。

オレの口元には、もう笑みは浮かんでいなかった。





《ある日、転校生がやって来た。 2nd days》

に続く