そのあとも、ファーストバイト体験ケーキとか、スプーンが1つしかないアイスとか、恋人っぽいものをいっぱい食べて。

キスとかそういうの、いっぱいして。

そろそろ帰る時間。


「レイくん」


私は、今だ!と思ってバッグから包みを取りだした。


「はい!プレゼント」

「……!」


私はにっこり笑ってレイくんにプレゼントを手渡した。


「!ピアスか」

「うん!いつもつけてるから。私がレイくんに一番似合いそうなものを選んだよ」


選ぶときは苦労したよ。

レイくんってばなんでも似合っちゃいそうで、絞るの大変だった。

悩みに悩み抜いて、ピアスのアクセントになる宝石の部分は、ブルーサファイアにした。

レイくん、好きな色はきっと青だって思ったから。


「ありがとう。気に入った」

「よかった!つけてみてもいい?」


そう提案すると、レイくんは目を見開く。


「……やってくれんの?」

「うん」


そんなにびっくりすることだろうか?

レイくんはとても驚いた様子だ。


「じゃあお願い」


ブルーサファイアのピアスを手に取る。

レイくんの耳に顔を寄せ、耳に触れて―――

…………なんかこれ、恥ずかしいな。

今更気づいたけど、レイくんが近いし、レイくんの匂いがするし。

うう、ちょっと後悔し始めた。

でもでも、このピアスは私が着けてあげたかったし。


「……っうん!よく似合ってる!」


なんとかつけ終わって微笑めば、レイくんはちゅっと私に軽いキスをした。


「改めてありがとう。一生大事にする」

「い、一生は大袈裟だよ!」

「大袈裟じゃない。本気」


もう、と照れ隠しで顔を逸らすと、くすりとレイくんは笑う。

……なんだかんだ言って、一生大事にするって言ってくれたの、ものすごく嬉しかったりするんだけど、レイくんには絶対言わない。


「そういえば」

「ん?」

「俺の好きな色はわかんないって言ったけど、青にしたんだな」

「うん」


レイくんはちゃんと、私が聞いたことの意味をわかっていたらしい。

私はレイくんが何を聞いてきても「カフェで事前注文するためか!」なんて思いつかなかったけどね。

それとも、私が鈍感すぎるだけかな。

……どっちもな気がする。

ちょっとだけ、ちょろい私にしょんぼりしながら私はレイくんを見やる。


「レイくんは、身の回りは黒か青だから。黒は多分好きなわけじゃなくて無難だからとかだと思うけど、青はなんとなく、レイくんが惹かれてるかなって」

「そう思った?」

「うん!間違いない!」


どうしてだろう、断言できるのは。

明確な根拠は、よく視線がいくとか、身の回りのものの色とか、それくらいしかないけど。

でも、はっきりとわかる。

レイくんは、青が好きだ。


「そっか……今までわかんなかったけど、そうかも」


レイくんは私の頭をぽんと撫でた。


「ま、違ったとしても、果音が選んでくれたから絶対俺の好きな色青になるけど」

「何その理屈」


そんな、私が選んだってだけで好きな色がそんなに簡単に変わるわけな―――

………………変わるかも?

私も、レイくんが選んでくれた色ならなんでも、好きになれそうな気がする……。

私とレイくんって、意外と似た者同士なのかもね。

私は、思わぬ発見にむふふと笑った。


****


その日は、次会う予定を取り付けて終わった。

次会うときには―――話す予定だ。私の過去を。

私が、4年前にこの久雪街に「転校生」として来た理由。

私たちと貴也くんの間にあった出来事、そして私の仲間たちのことも。

レイくんが何者なのかはちょっとわからないけど、でも、レイくんが味方についたら絶対に心強い。


「…………」


なのになんだろう。

この、胸騒ぎは―――