冷たいスポーツ飲料片手に、みんなで集まる。

このスポーツ飲料はドラちゃんの奢りだ。ほんと大好き。

そして、私はみんなの前に立って、よく冷えたそれを掲げた。


「じゃあ、私たちの逆転総合優勝とレイくんの大会MVPを祝って―――」

「「「乾杯!!!!」」」


一気にスポーツ飲料を5回飲み下す。

どこかのジュースとコラボしたらしく、ほのかな蜜柑の香りがした。


「ぷはー!おいしーい!」

「本当、美味しそうに飲むな」


レイくんが笑った。


「レイくん、改めて、MVPおめでとう!」

「そんなに何かしたわけじゃないけどな。ありがとう」


レイくんは、体育祭で1番活躍した人に贈られるMVPを獲得した。

まあ、出場種目全部1位で、かつリレーで慎吾くんの分も走ったとなれば、ねえ。

この後、レイくんは何人に告白されるやら。

とかいう私も、いや私は元々好きだったけど、今回レイくんにときめいたうちの一人だったりする。


「のんちゃん、お疲れ様」

「お疲れ様、陽向っち!」


声をかけてきた陽向っちとイェーイ、って乾杯してから、余韻を楽しむ。


「何とかなってよかったねえ」

「ほんとだね。のんちゃんとっても速かったよ!」

「ふふ、ありがとう陽向っち!」


陽向っちの柔らかい体に抱きつく。

陽向っちは私を撫でてくれた。なんかお姉ちゃんみたいだ。

今だけは私が妹だね。

そうしていると、ふと、近づいてくる気配を感じた。


「よう、おつかれ」

「慎吾くん!」

「あ、後藤くん……怪我、大丈夫?」

「ああ、サンキュな」


笑った慎吾くん。

なんだか本当に大丈夫そうな笑顔を浮かべるものだから、気が抜ける。

きっと無理してるんだろうけどさ。


「なあ結野。今ちょっと話せる?」

「え?ああ、うん。」


慎吾くんから真剣な空気を感じた私は、レイくんと陽向っちに行ってくるねと声をかけて、慎吾くんとその場を離れた。