そして、体育祭前日。
窓の縁に腕を乗せて、すうっと息を吸う。
生ぬるい空気と虫の音。光る星に、柔らかな三日月。
ゆるゆると睡魔に襲われて、私はうとうとしていた。
『果音、危ない大人には気をつけろよ。怪我したらすぐ言え』
『それか、どうしても無理なら、とある大人に助けを求めるんだ』
『いいか、その大人たちは―――』
「……」
そうか、そうだった。
「彼ら」は、きっとそうなのだ。
かつての私も似たようなものだった。今の彼も、あの男も。
うとうとしながら、ぼんやりと思い浮かべながら、私はふうと息を吐いた。
………そう、レイくんは、『あの身分』の人なのだ、きっと。
理解したけれど、でも、それらは浅い夢と一緒にゆっくり溶けていく。
…あれ、さっき何考えてたっけ?
つかの間の夢を思い出せないまま、私はゆっくりと立ったまま寝落ちしたのだった。