それが覚悟の表れだということは、私にもよくわかった。薄々と気付いていたことではあるが、やはりそういうことなのだろう。

「ラナーシャよ、お前が成長できたのは、本当にこの男子の存在が大きいのか?」
「……はい。ランパーさんは、ずっと私のことを支えてくださいました」
「なるほど、それではランパーよ。お前に問う。お前は、このラナーシャのことが大切か?」
「ええ、大切です。彼女のことを、守りたいとそう思っています」

 ランパーからの返答に、ハワード様は口の端を歪めた。
 それはまるで、悪人のような笑みである。なんというか、これから彼が言うことはあまりいいことではないのかもしれない。

「このドルピード伯爵の令嬢を、お前は欲しいと思っているのか?」
「それは……」
「お前は平民だったな? 身分が違う訳だが、その点はどう思う」
「……俺にとって、そんなことは重要なことではありません」

 ハワード様に対して、ランパーははっきりとそう言い切った。
 それはある種の宣戦布告のような気がする。彼は、伯爵家の次期当主に啖呵を切ったのだ。
 それに対して、ハワード様は笑っていた。今度は先程までとは違い、からっとした笑みだ。

 やはり、彼は意地が悪い。こんな方法でランパーを試すなんて、ひどいと思ってしまう。
 しかしランパーは、彼の眼鏡に叶ったのだ。それは実に、喜ばしいことである。