「……よく頑張ったわね」
「……ありがとうございます」

 夫人が去った後、私はラナーシャに賞賛の言葉をかけた。
 彼女は、先程までの勢いを失い、力なくソファに腰掛けている。それだけ、ドルピード伯爵夫人との対決は苦しいものだったのだろう。

「本当に立派になったな? 驚いたぞ、お前が母上に啖呵を切るなんてな」

 そんな彼女に対して、ハワード様は嬉しそうに笑っていた。
 確かに、少し前の彼女ならそれは考えられなかったことだ。私にさえ怯えていたのに、その怯えの原因に堂々と立ち向かった彼女の勇気は、本当に素晴らしいものである。

「……これも、アラティアやランパーのおかげだな?」
「え?」

 そこでマグナスは、私とランパーに目を向けてきた。
 その視線に少し驚き、私達は顔を見合わせる。まさかここで、矛先を向けられるなんて、二人とも思っていなかったことである。

「……マグナス、それは一体どういうことだ?」
「兄上、アラティア嬢に出会ったことによって、ラナーシャは変わりました。そしてそんなラナーシャがさらに強くなれたのは、ランパーの存在が大きいでしょう。彼はラナーシャに寄り添ってくれたのです」
「ほう……」

 マグナスの言葉を受けて、ハワード様はゆっくりと彼を見つめた。
 その吟味するような目に、ランパーは決して怯まない。堂々と背筋を伸ばして、彼はそれを受け入れている。