彼女のその苛烈な嗜虐的欲求は、あくまでもラナーシャやその母に向けられているものであるそうだ。目の前にいる実の息子二人には、母親としての愛情を持っているらしい。
 その二面性も、彼女の恐ろしい部分ではある。

「本人が罪を認めない以上、証拠を示すしかない。しかしながら知っての通り、透明な毒は検出されない毒だ。故に、証拠を示すことはできない」
「俺とマグナスが追及して落ちない母上を、他の者が落とせるとも思えない。故に我々は、次なる手を考えているという訳だ」
「なるほど、そうですね……」

 二人はきっと、それなりに強く追及したのだろう。それでも落ちなかった夫人は、相当に手強い相手であるらしい。
 そんな彼女を追い詰める方法、それを私はすぐに思いついた。効果があるかどうかはわからないが、とりあえずやってみてもいいだろう。

「お二人とも、私に一つ提案があります。これは、お二人にとって非常に辛い作戦のような気がしますが……」
「いや、それは構わない。母上がその罪を認めるなら苦労など些細なことだ。兄上も、そうだろう?」
「もちろんだとも。アラティア嬢、あなたは一体何を考えているのだ?」
「方法はとても簡単です。お二人はこの屋敷で暮らしてください。して欲しいことは二点です。食べ物に気を付けることと夫人に気を付けさせること。それだけです」
「それは?」
「なんとも……」

 私の言葉に、二人は顔を見合わせた。
 しかしきっと、これで夫人を追い詰めることはできるはずだ。私が思っている通りなら。