カルロム伯爵の死は、予想していた通り病死ということになった。
 義母は納得していなかったが、彼女の秘密をイレーヌが告発したことによって、彼女は窮地に立たされてそれ所ではなくなった。結果的に、義母イピリナは伯爵家を去ったのである。
 イレーヌは母親とともにいかず、とある神父の元へと向かった。そんな彼女と別れてから私が向かったのは、ドルピード伯爵家の屋敷である。

 客室に通された私は、目の前で複雑な顔をしている夫と義理の兄を見ながら考える。今の二人に、なんと伝えればいいのだろうかと。

「……とにかく、そちらの問題が片付いたなら良かった」
「ああ、ええ、そうね。お陰様で、なんとか解決することができたわ」

 そんなことを考えている内に、マグナスの方から私に言葉をかけてきた。
 色々とあったが、私の方は概ね全ての因縁を解決することができたといえるだろう。それはもちろん、嬉しいことではある。

 ただ、このドルピード伯爵家に渦巻く問題が解決していないという事実に、私は素直に喜ぶことができなかった。本当の意味で安心できるのは、こちらが片付いてからということになるだろう。

「えっと、お二人の方は中々に難航しているようですね?」
「ああ、こちらについては少々厄介なことになっている。母上は毒のことなど知らぬ存ぜぬの一点張りだ」
「本人の自白はない以上、透明な毒などという存在を解き明かすことは難しい。故に今、我々は手をこまねいているのが現状だ」

 私のお父様とは違い、ドルピード伯爵夫人は息子を手にかけるようなことはしようとしなかったらしい。