「蒸発しているようにも見えますが、大丈夫なんですか?」
「問題ないと聞いているわ。店主が嘘をついていたとも思えないし、これで大丈夫……」

 透明な毒と呼ばれているものの性質は、地下の薬屋から聞いている。
 恐らく彼女は、嘘はついていないはずだ。それが嘘だった場合、彼女の要求は叶えられないことになる。そんなリスクは、わざわざおかさないだろう。
 そう考えながら、私は紅茶も太陽の元に晒す。こちらに入っている毒も、消滅させなければならないと思ったからだ。

「それにしても、驚いたわ。まさか、あなたが私に協力してくれるなんてね……」
「……お姉様から見れば、そう思われますよね。私はずっと、あなたとは敵対していましたから」
「でも、あなたなりに色々と理由があったのでしょう? まあそもそもあなたは私と話さなかったというだけで、危害は加えていないしね」
「いえ、それでも私はお母様やお父様に従っていました。本当に、申し訳ありませんでした」

 毒の浄化が終わってから、イレーヌは私に頭を下げてきた。
 彼女の協力は、私やマグナスにとっては予想外のものだった。お父様からの手紙とともに送られてきた手紙に、私もひどく驚いたものだ。