「イレーヌ、来ていたのね……」
「……」

 今までほとんど話したことがなかった義妹は、苦しそうな顔でお父様のことを見ていた。
 そんな彼女を見て初めて私は、少しだけ罪悪感を覚えるのだった。

「……終わったんですか?」

 お父様の死を振り払うように、イレーヌはゆっくりと口を開いた。
 そこで私は、頭を切り替える。罪悪感を覚えている場合ではない。私には、まだやるべきことがあるのだ。

「終わっていないわ。まだ重要なものを見つけ出していない」

 私はお父様の亡骸を探る。そこに目的のものがあるかもしれないからだ。
 すると、彼の服の内側のポケットから一つの小瓶を発見した。その小瓶の中には、透明な液体が入っている。

「特徴は一致しているわね。恐らく、これが透明な毒……」
「まだ、かなり残っていますね……」
「ええ、ほんの一滴で効果は出るみたいだから」

 私は、窓を開け放って周囲を見渡す。周りには誰もいない。これなら、恐らくは大丈夫だろう。
 念のため用意していた手袋をつけてから、私は瓶の蓋を開ける。そして私は、その小瓶にめいっぱい太陽の光を浴びせる。

「瓶の中身が……これは?」
「透明な毒は、光――特に太陽の光によって消滅する。どうやら、あの店主が言っていたことは本当のようだわ」