「……一体、私に何のようですか?」
「ふん。久し振りの帰郷であるというのに、随分と不機嫌そうだな?」
「当り前でしょう。喜べるはずがありません」

 ラグナメルの町から帰ってきた私は、すぐにカルロム伯爵家へと帰ることになった。
 それは、お父様から呼び出されたからである。彼はとにかく私に帰って来るように、要求してきたのだ。

 タイミングからして、それは私がラグナメルの町へと行ったからなのだと思う。
 恐らくお父様は、私に何かしらの釘を刺すつもりなのだ。いや、あるいは彼はもっと非道なことを考えているかもしれない。

「……誰も連れてきてはいないのか?」
「ええ、そういう要求でしたから」
「旦那はどうしている?」
「マグナス様は、ドルピード伯爵家に向かいました。奇妙なことに、彼も同じタイミングで帰るように言われましたから」

 マグナスも、ドルピード伯爵夫人から呼ばれたことによって、私達は自分達が監視されているという事実を理解した。
 色々と考えたが、私達はとりあえず呼び出しには応じることにした。二人の手元に例の毒があるという事実から、従う方が得策だと考えたのだ。
 万が一にも、油断している時にその毒を使われたら敵わない。対策を立てることができるため、相手の要求には乗る方がいいと思ったのだ。