ほんの数年前まで、毒が存在していた。ということは、私の母やラナーシャの母もその被害を受けた可能性はある。

 私達の調査が、一歩進んだ。
 決して検出することができない毒があり、加害者と思われる二人がそれを販売している場所へ来ていた。それはとても重要な手がかりだ。

「しかし、お二人はそんなにあの毒が欲しいのですか? なんだか、そういう風には見えませんけど……」
「……ほう? それは一体どういうことだ?」
「私の見立てでは、お二人はこの場所には場違いですからね。犯罪とは無縁のような気がします。もっとも私が演技を見抜けない節穴なだけなのかもしれませんが……」
「……」

 店主の女性は、私達を見ながら目を細めていた。
 それは私達のことを、推し量っているような気がする。
 どうやら、この女性は周囲の他の店主達とは違うらしい。私は雰囲気でそれを悟った。

 マグナス様も同じなのか、考えるような仕草をしていた。
 恐らく、思案しているのだろう。彼女から事情をもっと聞くかどうかを。

「……俺の目的は一つだ。透明な毒について知りたい。その詳細をできる限り詳しくだ」
「知りたい、ですか? なるほど、よくわかりました……それなら、こちらの望みを一つだけ聞いてもらっても構いませんか?」

 女性は、マグナス様を見て笑っていた。
 そこには、何かしらの思惑がありそうだ。ただ、きっとそれは悪いことではない。先程からの彼女の態度に、私はそんなことを思うのだった。