そのまま私達は、ゆっくりと闇市の中を歩いていった。周囲の商人らしき者達は、そんな私達に当たり前のように声をかけてくる。

「そのお方、こちらの奴隷はどうです?」
「いや、こっちの虫を見てくださいよ。絶滅が危惧されている大変貴重な虫ですよ?」

 市場としては、その光景は珍しいものではないだろう。
 しかしその内容は、現実のものとは思えない。そんなことを思いながら、私は目的のものを探していた。

「マグナス様、あれを……」
「む……」

 そこで私は、とある店を発見した。
 その店には、薬品らしきものが並んでいる。もしかしたらその中に、私達が求めている透明な毒なるものがあるかもしれない。
 私とマグナス様は、再び顔を見合わせて頷き合ってからその店へと向かっていく。ある種の決意を固めながら。

「店主、少しいいか?」
「あら、お客さんですか?」

 マグナス様が声をかけると、店の店主は少し驚いたような顔をした。
 よく見てみると彼女は、手元で何かの葉っぱを擦っている。それに夢中で、私達の来訪に気付いていなかったということだろうか。

「この店では、どういったものを扱っているんだ?」
「薬の類を扱っています。色々な薬がありますよ。ほとんど非合法な薬ですけれど」

 マグナス様の質問に、店主の女性は一つの瓶を手に取った。
 彼女は、その瓶の蓋を開ける。そしてその中から、錠剤のようなものを自らの掌の上に落とす。