私とマグナス様は、ラグナメルという町まで来ていた。
 ここで開催されているという闇市が、今回の私達の目的地だ。

「……地図によると、こっちのようだ」
「……路地裏、ですか。あまり入りたい場所ではないわね?」
「安心してくれ、君のことは俺が守る」
「ありがとう」

 路地裏の薄暗い雰囲気は、私に恐怖を与えてきた。
 事件が起こりやすいこの場所に足を踏み入れるのは、中々に勇気がいる。
 だが、私は立ち止まる訳にはいかない。必ず母達の死の真相を解き明かすのだ。

「この店か……準備はいいか?」
「ええ、行きましょう」
「……失礼する」
「おや……」

 私とマグナス様は、路地裏の怪しい店へと入っていった。
 薬屋と看板には書いてあった。その店名に違わず、店の中には薬らしきものが並べてある。
 ただ、私達が求めている薬はここにはないだろう。ここはまだ、人が普通に来られる場所だ。

「これはこれは、まさか貴族の方々がこのような場所に来られるとは……ご用件は、なんでしょうか?」
「知人からこの招待状を預かってきた」
「招待状、拝見させてもらってもよろしいでしょうか?」
「もちろんだ」

 マグナス様は、店主に例の招待状を渡した。
 その中身をみた店主は、口の端を釣り上げる。その嫌らしい笑みに、私は少しだけ不快さを覚えてしまう。