「ハワード様、話してください。一体何を知っているんですか?」
「……透明な毒だ」
「透明な毒?」
「透明な毒と呼ばれる検知できない毒がある。昔からまことしやかに囁かれている噂だ。俺も実在するなどとは思っていなかった。しかしもしかしたら、その毒は実在するのかもしれない。忌々しいことではあるが……」
「これは?」

 そこでハワード様は、懐から一通の封筒を取り出した。
 そこには見慣れない文字が書いてある。これは異国の言語だろうか。

「これは俺が懇意にしている神父からもらったものだ。神父の名誉のために言っておくが、彼はそれを懺悔しに来た者から預かっただけで、そこには行っていないそうだ。いやそもそも、それが本物であるのかもわからない」
「これは、闇市への招待状ですか?」
「そういうことになるだろう。本来であれば、俺が行きたい所ではあるが、母上の目がある以上、お前達に頼むしかない。そこにいって真偽を確かめてきてくれ」

 ハワード様は、私達に対して申し訳なさそうにしていた。それはきっと、ここに危険があると思っているからなのだろう。
 しかし、私もマグナスも答えは決まっていた。例え危険であろうとも、真実を解き明かす。それはこの調査を始めた時から、決めていたことなのだ。