「行ってきて、赤史」
「しょうがねぇな。“俺の姫”の頼みだから聞いてやる」
「…」
赤史はすたすたと、舞台のほうへ歩いて行く。
私は舞台袖からその姿を見守った。
「Cometの集会を始める!連絡事項は特になし、3年から報告を――」
暴走族には、その総力を持って特別に守ろう、と決めた女の子…通称、姫と呼ばれる存在がいる。
私がCometの姫になったのは、水成中学に入学したばかりの、去年のこと。
先代の総長だったお兄ちゃん、銀河一悟は、妹の私もあきれるほどのシスコンで、迷うことなく私を姫に指名した。
ふつう、姫と言えば総長のカノジョ、みたいな認識らしいから、それがどれだけ異質なことかは言うまでもない。
「次、2年――」