私は舞台袖に移動して、持ってきた紙袋から暗い青のドレスと、花の()しゅうをしたマスクを取り出す。

このマスクは、レン先輩が提案してくれたもの。

“マスクもオシャレすればどうかな?”って。


大きなハンデを負うことになるのに、顔を出さないこと前提ではなしを進めてくれたのがうれしかった。

レン先輩は、いろんな方向から私を守ってくれる。




「なんだ、そのマスク。そんなのでミスコンに出るつもりか?」


「っ、赤史…!」




聞こえるはずのない声におどろいて顔を上げると、舞台の奥をおおう暗幕の裏から赤史が出てきた。




「…なにしに来たの?」


「応援してやるんだよ。マスクしてたら桃と勝負にならないだろ?」




赤史はずんずんと私に近づいてきて、手に持っていた刺しゅうマスクをうばい取る。

力で負けてしまった私だけど、それでも取り返そうと手を伸ばした。