うす暗い舞台袖の階段を上がってふり返ると、やる気のない目と視線が合う。




「もう、シャキッと…」


「二葉がマスク取ったら、やる気出す」


「!」




出た、いつもの。

私はマスクを押さえて悩んだ。

赤史は口元に笑みなんて浮かべて、私がマスクを外すのを待っている。


1年のときに一度素顔を見られてから、ずっとこう。

でも…笑わなければいいだけ、か。


私はふかく息を吐いて、ゆっくりマスクを外した。




「これで、いいでしょ」


「あぁ」




赤史は私のほおに触れて、笑みを深める。




「俺以外に見せんなよ」




言われなくても。

っていうか、本当は赤史にだって見せたくないし。


私は赤史の手をそっと外して、明るい舞台のほうを見た。